随筆 コロンビアの冒険 ブエナ・ベントゥーラ (前編)

随筆 コロンビアの冒険 ブエナ・ベントゥーラ (前編)

コロンビアのカリで日本人の連れができて一緒にアパートを借りて住んでいた。
自分より若いが、早く海外に出て多くの国々を知っていた。
ある日その連れと、「カリはいいところだけど海がないので、どこかのビーチに小旅行に行くか」ということになった。
地図を見ながらカリから近く海のある街をてきとうに見ながら、ここはどうかとブエナ・ベントゥーラという街を選んだ。
ブエナはグッド、ベントゥーラはベンチャー、良い冒険という意味になる。
大航海の末コロンブスがたどり着いた地をコロンビアと名づけられた。
この街もいろんなエピソードに因みブエナ・ベントゥーラと名づけられたんだろう。

この街について何も知らなかったが、トロピカルなリゾートビーチに、シャキラ(コロンビア人)のようなセレブがカクテルを片手に長椅子に寝そべっているのをイメージした。
「名前もかっこいいし良さそうじゃん」
と水着と数日分の着替えと、一応簡単なマジック道具も詰めて次の日早くに安いバスに乗った。
コロンビアに限らず中南米の主要ルートでは様々な等級のバス会社があり、それも交渉しだいで安くなったりする。

何時間たっただろう。そろそろ着くだろうかという時間になると貧乏そうな黒人街にバスが入っていった。

街はけっこう大きくバスはどんどん奥に入っていく。
アスファルトもない道の両側に、不揃いの板を打ち付けて作ったような家が延々と続く。ゴミ捨て場なのか自然にゴミが溜まったの分からないような場所が至るところにる。ゴミ溜めの真ん中に掘っ立て小屋を建てて住んでる奴もいた。

ここを通り抜けるときれいな街に着くのかと期待した。貧乏街と金持ち街が隣り合わせということはよくある。

そう思って車窓から街を見ていると、その街の道と建物が少し大きくなり始めた中心地らしきところでバスが停まって、「ブエナ・ベントゥーラ!」と声が聞こえた。

「えっ、ここ?」

「これスラム街じゃん、大丈夫か?」

街全体がスラム街、そんな印象だった。

失望と不安を抱きながらバスから降り、とりあえず宿を探した。
行き着いた宿は元々工場か役所だったような三階か四階建ての建物に、玄関は刑務所かというような厳つい錠が付いていた。
中は薄いベニヤ板で無理やり仕切ってたくさん部屋を作っていた。
雨季でカビ臭く、話す声は丸聞こえ、火事になると一瞬で全焼しそうな作りだった。

いつも通り外出の際、お金や貴重品を持っていくか宿に置いていくか迷う。
泥棒も来るし宿の従業員も平気で盗む奴もいる、外では強盗にやスリに会うこともある。

まずは街を探索しようと必要なものだけ持って外に出た。

MINOLTA DIGITAL CAMERA

(上の写真は「この街でカメラは出せないな」と連れが一枚だけホテルの窓から隠し撮りした唯一のブエナベントゥーラの写真」スラム街の様子がみたい人は下のリンクにグーグルの画像検索があります。

pobreza de buena ventura

 

歩くと黒人たちがじろじろ見てくる。
服装も身のこなしも貧相で品のなさが目立つ。
カリにも貧乏な黒人エリアがあるがそれと比べてもこの街は陽気さがない気がした。
とりあえずあっちが海だというの方に大通りを歩いていくと、今までの町並みに似合わないきれいな公園に出た。
植木や芝があり、グランドは舗装されている。金持ちそうな黒人がきれいなスポーツウエアにヘッドフォンをしてジョギングやストレッチをしていた。
その公園の奥にりっぱな市役所があった。

公園は海に面していた。

きれいでないのはすぐに分かった。近づくと砂ではなく真っ黒いヘドロにゴミが散乱し腐臭がする。
カリの宿でリゾートビーチの話で二人で盛り上がったのを思い出して苦笑いした。
「どこにシャキラがいるんだよ」
セレブにカクテルどころか地元の貧乏人でも誰も海に下りていない。

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