随筆 他人のネクタイを切るマジシャン

随筆 他人のネクタイを切るマジシャン

ペルーで会った年配のマジシャンが家に呼んでくれて、ご飯をいただきながら話していると、そこに来ていた同じくらい年配のマジシャンが、観客から借りたネクタイを切ってもう一度繋げるマジックが受けるんだと言い出した。
その説明する手つきを見ながら自分の知識に照らして考えていたが、ロープマジックのテクニックの応用と思われるが、そのやり方ではどうしてもどこかを切って短くしないと成立しないテクニックに思えた。
つまり、バッサリと真ん中を真っ二つに切り、確かに床に切れ端が転がっているが実はロープは繋がっており長いままという手品の筈だが。
観客から借りたネクタイということは前もって細工をしているわけでもない。
それを公明正大に切って、また繋げて無傷で観客に返す、この人にそんなすごいことができるのか?
どうしても不可能と思えたので失礼ながら
「それ、本当に切れてないのか?」
とたずねた。すると、
「まあ、これぐらいは切れてるんだけどな」
と指で5センチくらいの間隔を作ってこっちに見せた。
他人に借りたネクタイを5センチも短くして返すのかよ、と苦笑いだったがここでは5センチくらいじゃ切ったうちに入らないのか..

確かに表側が無事なら使えることは使えるが..
ネクタイが切れても人が切れない、それくらい大らかな文化は正直羨ましい。

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