平成30年9月17日
一昨日のことですが3連休の最終日、急に時間が空いたので久しぶりに尾道商店街で大道芸、ストリートマジックをしてきました。
通常の週末や祝日は他のイベントやパーティの契約が入りやすくなかなか空きが少ないというのもありますが、この夏は洪水の被害やその後の断水も長く続き、またその復旧後も猛暑でショーができない状態でした。
気温35℃という中で、例え演じる方が必死にやったとしても観客は立ち止まってくれないでしょう。
日本もいつの間にか暑いか寒いかだけの極端な気候になってしまい、ちょうどいい季節というのは昔と比べて短くなったと感じます。
ここのところ毎年のように「もう少し温かくなったら大道芸をしよう」と思っていたら、すぐに極端に暑くなり、「もう少し涼しくなったら・・」と思っていると今度は一気に寒くなり、雨もなく心地よく大道芸をできるのは年間を通してもほんの数週間ではないでしょうか。
で、一昨日はショーをするにはなかなかやり辛い一日でした。
昼過ぎに始めましたが3連休の最終日ということで道行く人がみんなお急ぎモードで、子どもにまで疲れが顔に出ていて最初の人垣を作るまで一苦労でした。
こういうときに、まず誰か見てくれる人がいないとショーが始められない手品という芸からすれば、目の前に誰もいなくても演奏を始めればだんだん近づいてくる通りがかりの人の耳に入るミュージシャンは羨ましいです。
エンディングもしかりで、手品では少しずつ盛り上げて最後の演目を決めてチップをもらうのに対し、音楽はストリートでは一曲一曲なので演奏を続けていれば観客はいつ来てもよく、またいつでも帰れます。
結局この日は2回ショーをしました。
最初のショーはみんな大人で少人数でしたが興味深々で見てくれましたが、残念ながら『もっと見たいけど時間がない』という風に途中で数人抜けていかれました。
ここが尾道の難しいところで、尾道を訪れる観光客の延べ人数は多くても、大半はどこか別の街への行き帰りに立ち寄る人が多く、限られた時間内で千光寺、尾道ラーメン、カフェ、またはしまなみ街道のサイクリングとルーティーンを早足で回られる人が多く、ショーの途中で丁寧な人は「すみません、時間が・・」とチップを入れて去っていき、「もっと手品みたい」とごねる子どもの手を無理に引っ張って駅の方に向かっていく人も多くいます。
2回目のショーはまあまあ人が集まってくれて、一体感のあるいいショーになりました。
当然来たからには稼いで帰りたいと思ってやってますが、相手が強く興味を持っていて、こちらをリスペクトしてくれているのが分かればその限りではなくなります。
大道芸ではイベントのステージよりも一期一会、観客とのご縁というものを強く感じます。
ご縁と言っても”今後有意義な人間関係に発展すれば・・”というような期待や意味付けはなく、ただ”たまたまそこに居合わせた者同士のハプニングを楽しみたい”という気持ちです。
観客が3人だけなのでトランプなど近い距離で見せるマジック(クローズアップマジック)から初めて、3つ目のマジックだったか、それまで興味津々で見てくれていたその女の子に「ちょっとここ手伝ってくれる?」と声を掛けると急に泣き出してしまうハプニングがありました。「ごめんね、何も怖いことないよ」と言うと、お母さんが「怖いからでなく初めてのことに興奮し過ぎてどうしていいのか分からなくなったんです」と言われました。
とは言え、ごめんなさい。
小さな子は逆に大きな声で笑いだして、こちらが何もしなくても笑いが止まらなくなることもあります。
お母さんの言うように、手品を続けるとすぐに笑顔が戻り「どこか怪しいところないかチェックして・・」とロープを渡すとそれを手に取りお母さんと興味深そうに調べてくれました。
この頃からぽつぽつと人が集まり始め次第にいい雰囲気になりました。
ようやく人の流れも変わり人に余裕があるのが見て取れます。
昼食後に忙しなく駅に向かう遠方の人と、昼食後少し散歩をしてから帰ろうという地元の人または因島や生口島、三原市、福山市など近く人達との入れ替わりの時間がこの頃かと思います。
向島の方もいらっしゃり例の逃亡犯の話で盛り上がりました、と言いたいところですが私が一方的に盛り上げました。
ショーの後半はノリの良い音楽をバックに一つの風船から小さな風船のボールを次々取り出す(搗いたばかりの大きな餅を千切って小さな餅を作っていくような感じ)リズミカルなコミックマジック、そして海外では自分のトレードマークになっていた金属の輪を使った古典マジック、リンキングリングで拍手喝采となりました。
「ここで終わっても良かったのですが、今日はチップをたくさんいただいたので」ともうひとつ、手を触れずに椅子が浮き上がるという演目で、みんなの笑顔と拍手の祝福でショーを終えることができました。
この一体感を共有すると、さっきまでお互いに見ず知らずだった者同士が「どうぞみなさん、お元気で」と心から願えるようになります。
道具を片付けていると最初に立ち止まってくれた親子の女の子が、一人でチップを持ってきてくれました。
先ほどチップを集めた時にお母さんから十分頂いてたのですが、今度は「ありがとう」と自分の手で入れてくれました。
上6枚の写真は animalおのみち(ツイッター)さんから提供いただきました。